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それは単なる小話の集合体である。 - 日記

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祷月 常磐 @tokiwa

わたしが思いついた小話をぽんぽんひゅんひゅん放り込む日記になりますー!
登場キャラは緑青学園やその他もろもろ。

▼ 閲覧コメントなどは勿論大歓迎です! お気軽にお越しください(^ω^)コメントの際は高速でお返事させて頂きますb
▽ 基本的に登場致しますのは我が子ですー! えへへ親ばかでごめんなさい()
▼ よそ様のお宅のお子様を、もしかしたらお借りするかもしれません……! 事前に了承頂きましたお方のみですが、使っても大丈夫というお方が居りましたらお知らせ頂けると嬉しいです……! なんかあの、ごめんなさい()
▽ お題などありましたら、提供して頂ければ本当に嬉しいですええっ、もうまじで(
▼ 何か有りましたら、わたしのアカウントまでお知らせ頂けると幸いです!

それでは、ゆっくりして頂ければ幸いにて御座います!(*´∀`*)
お題をください(切実)←

2013/09/19 12:59 - No.0

2013年9月の日記

コメント

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/09/19 21:40 - No.1

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/09/19 22:25 - No.2

@tokiwa

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2013/09/20 16:00 - No.3

祷月 常盤 @tokiwa


お題:『今、何をしていますか?』(某診断メーカー結果より)

//


 いくら夏が溶けてしまいそうな程暑くても、しかして冬は、確実にやってくる。十月初旬の肌寒いある日。学園は、静かなる安息の日を迎えていた。
 それは、学園の教師として勤めている俺にも例外ではなく、いわば今日一日、まるまるオフというわけである。しかし突然与えられた休息というのも、それはそれで使い道に困るというわけなのである。というのも、昼まで惰眠をむさぼろうと思っても日々しみついた早起きの習慣というものは簡単には拭いきれないというもので。本日も、何時もと同じように朝六時には起床してしまった。欠伸をひとつ浮かべながらも、寝癖を整えて身支度を整えベッドメイキングを済ませ、それから部屋にあった時計を見やると既に七時になってしまっていた。ふむ、まあいい時間かなと一人笑むと、自室を出て廊下をゆっくりと歩く。因みに、俺が住んでいるのは緑青学園に勤める教師の大半が住んでいるマンションの一室である。マンションといえどもその内装はとても凝っていて、というかマンション自体の規模や造り構造はどこぞの四つ星ホテルと見まごうほどのものである。エレベーターに乗り、迷わず一階のボタンを押して、すると下降していることが体感でわかった。背を凭れて一息つき、暫くするとエレベーターの扉が開きゆっくりと歩を進めた。一階には玄関口は勿論、フロントや幾つかカフェなどもあり、やはり煌びやかなそれはマンションとは称しにくいかもしれない。しかし、れっきとしたマンションなのである。

 朝食をとろうと、決まったカフェへ決まった席につくと、顔なじみのウェイターが対応をしてくれた。いつものを、と頼むと快く了承してもらい、辺りを見渡す。流石休日というわけか、同期や顔見知りも疎らだ。それには小さく笑み、さて、と。俺もこの持て余した休日をどうしようかと思考をめぐらせるのであった。

 頼んだそれがやってきたことに、もぐもぐと咀嚼し自らの血肉へと変えつつ、やはり未だこの休日をどう過ごせばいいか懸念する。貴重な休みであるので無駄にはしたくない。ふう、と一息つくと、綺麗に平らげた皿の前で合掌し、「ごちそうさまでした」と満足げに口にした。食後のコーヒーを楽しみつつ、尻ポケットに入っていたスマートフォンを取り出していじり、そうしてひとつ、思うのだ。
 「あげはは今日、どうしているのだろう」と。恋人であるあげは。なによりも、愛おしい存在。そう思えば、必然と次にとる行動は決まっていた。
 登録されている彼女の名前を呼び出して、通話ボタンをためらいなく押す。彼女が出たら、こう問いかけるのだ。


「――もしもし、あげは? 俺だけど、今なにしてる? 暇なら俺と、デートでもしないか?」


//


暇を持て余した霙が絶対にとる行動。愛する恋人へデートのお誘いをする、霙の小話。
ゆーちゃん宅より、あげはさんのお名前をお借りしました! 勝手に携帯持ってる設定してごめんなさいorz
ところで霙は、やっぱりいつだってあげはさんと一緒にいたい。

2013/09/20 17:17 - No.4

祷月 常盤 @tokiwa


お題:『きみへ、逢いに行こう』

//


 自分が、ひどく疲れているというのは知っていた。書かなければならないレポートの期限は刻一刻と迫るし、大学でも上辺を繕わなければならないので精神的な疲れも蓄積される。友人は多いほうだが、俺にとっては所詮赤の他人である。別に、友人は居なくてもいいと思っている。しかし、社会に生きていう限り世渡りするためにはこういった対人関係をおろそかにしては、のちのち支障も出てくる。それは、避けていきたい。少なくとも四年間の辛抱であると自ら言い聞かせるのだが、それによって蓄積されたストレスは一向に解消はされない。それは、――愛する恋人と、ここ二週間程、会えていないから。
 俺にとって恋人は、それは何よりも大事なものである。大切な、大切にしなければならない存在。それこそ、得意だった上辺で付き合うなんていうのはまったく出来ない。俺はいつだって、愛する恋人にだけは自らのこころの内をさらけ出している。あの子には、俺だけを見ていてほしいだなんて、そんな束縛めいたものも吐露しそうになり。けれどそれは、そういった黒いものはすんでのところで留まる。俺ははじめて、人に、恋人に、嫌われることが怖いと思ったのだ。愛しているからこそ、大事にしたい。きらわれたくない。 なんて。年上の俺がそんな女々しいこと、許されるはずがない。ひとりでに苦笑をうかべ、いつしか止まってしまったタイピングの手に、そのまま脱力をして溜息をついた。書きかけのレポートをきちんと保存し、再度大きなため息をついた。もう、なんだかこれ以上書き進めない気がして、気分転換に顔を洗いに行こうと洗面所へ向かった。ぱしゃり、と水の音を弾けさせながら顔を洗い、清潔なタオルで拭いて改めて目の前の鏡を見つめると、ひどい顔だった。この頃、あの子に会えていないからそれによる不眠症と、ストレス、疲れがどっときている。目の周りには薄く隈が出来ていて、これは、もう無理やりにでも睡眠をむさぼらなければならないかと思案するものの、眠れる時間なんてたかが知れている。
 ならば、いっそのこと。どうせ明日は、幸いにも授業が休講になったので大学はない。レポートは、まあ今日くらい大丈夫であろう。
 そう思うと、行動は自然と急ぐ。鍵と財布と携帯だけを持って、この広い家をあとにする。何処に行くのかと問われれば、勿論、恋人のもとへと決まっている。あの子の家は自分の家から近い。というか、直ぐ近所である。また、ひとりで泣いてはいないだろうか。今回は二週間と随分間があいてしまったので、寂しい思いをさせてしまっているに違いない。天邪鬼な恋人を、この会えなかった二週間を埋めていくように甘やかしたい。そうして、ある家へとたどり着く。躊躇いなくインターフォンを押して、愛おしい恋人が出てくるまで、あと――。


「――、まつり、あいたかった」


//


ストレスと疲れで不眠症な忍は、茉莉くんと一緒に眠ることで解消される。そんなわけで、忍の小話。
ゆーちゃん宅の茉莉くんのお名前をお借りいたしました!
かわいいは正義。愛も正義。

2013/09/20 18:56 - No.5

祷月 常盤 @tokiwa


お題:『喪失(うしな)いたるは』

//


 都市を離れて、同志たちとも別れを経てのち、追手からはその都度文字通り命からがら逃げ出して。そして、計画を遂行させるために色部の本家へ当主として、舞い戻り。反吐が出るがこれも計画のためであると約三年程、当主としての仕事を全うしてきた。粛々と、淡々と。波風たてず、しかし確実に内部を侵食し破滅へと追い込むために。色部の血は、血族は、すべて根絶やしにしなければならない。これは、単なる自身のエゴと思われるかもしれない。しかしこれで、色部の家を潰すことで、――『彼ら』を救うことが、出来るのならば。
 結果として、色部の家は文字通り『潰れた』。家のみではない。その機能も、人間も、存在意義さえも。色部の血は、存在は、もう『俺で最後』だ。

「――――、わるいな、お前たちと交わした『生きて逢おう』という約束は、果たせそうにないかもしれない。……なあ黎二よ。お前が俺を追っていると文字通り風のうわさで聞いた。今お前は、きっと政府の人間として働いてるんだろうな。まあ、安界のトップだから、当たり前か。……シアワセになれって、言ったはずだろう。お前のシアワセはなんだ。少なくとも、俺を追うようなことが、シアワセな、幸せなわけがねえだろ。ほんと、ばかじゃねえのおまえ。むかしっから、ほんと。そんなことしてる暇が有るなら、てめえの恋人を幸せにしろっつうの。それでもおまえが、ばかみたいに俺を追ってくるなら、ならはやく」

 ――おれを、かぜにしてくれ。

 ぎこちない笑みを浮かべて、そうして。暖かなそれが、右の頬を滑り落ちた気がした。
 色部の血族を根絶やしにしなければならない。それは、俺という存在も当てはまる。


 そしてその後に風の『存在』が感じられなくなり。
 数時間後、――『ジゼル』の音(こえ)と存在が、ぱたりと消えた。
 それは、能力の喪失を意味する。小さくつぶやいた「ジゼル」の名前は、しかして虚しく空気に溶け込んだ。


//


家を潰して直ぐの呉祇の小話。はるちゃん宅の黎二くんのお名前をお借りいたしました! 有難う御座います毎度毎度色々とごめんなさい(ほんとだよ
ジゼルの存在を感じれなくなってから能力が使用できなくなる。
風になりたい、という願いをかなえてもらいたい呉祇。黎二くん本当にまじ色々迷惑かけてごめんなさいはるちゃんごめんなさいorz

2013/09/20 19:41 - No.6

祷月 常盤 @tokiwa


『お前たちに贈る、最高のラストを。おまけ』

//


「――行こうか、同志諸君。我らが望む、エデン≠ヨと」


 そう言った小鳥遊呉祇の微笑みは、晴れやかだった。多くの仲間を、同志を引き連れて。これから始まるであろう死闘にして激闘。此処に居るすべての『楽園』の仲間たちの数だけの、外≠ヨの願いを心にして。必ず脱出しよう。そして必ず、全員で。また、生きて逢おう。

『……、! ふふ、任せて黎二くん。呉祇くんにはこのジゼルが、きちんと傍にいるもの!』
「……ジゼル? なに?」
『なんでもないわ。ふふ、ジゼルの秘密なのよ』
「は? ……、まあ良いけど。んじゃあジゼル、ひとつ俺たちと――愉しもうか』
『ふふっ、任せておいて呉祇くん! わたし、張りきっちゃうのだから!』


 緑青色に靡く風は、都市を緩やかに撫でていく。

 さあ、新しい物語≠はじめよう。


//


はるちゃんのSSを読んですごく、すごく書きたかったのでうっかり書いてしまいましたてへ()
はるちゃん宅より、黎二くんのお名前をお借りいたしました! ジゼルにこたえさせたかった、そんな小話。
台詞がメインです。

2013/09/20 21:31 - No.7

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/09/20 23:54 - No.8

祷月 常盤 @tokiwa


『冬の寒さと心地よさ』


//


 冬は好きで、寒さも好きだ。頭はクリアになるし、風も澄んでいる。そしてなによりこの寒さ自体が心地よい。
 現在、冬まっただ中の十一月後半。不定期にやってくる緑青学園の休日の一日も、もう直ぐ終わりを告げようとしていた。

 小鳥遊呉祇の休日は、至極淡々としていた。朝いつも通り七時に起床し、身なりなどを整えてから寮の共有スペースで朝食を接種しに向かう。其処には見知った顔も多く、同志たちも居れば安界らも当然居る。それはそうだ。此処は、高等部に在籍している生徒のための寮なのだから。しかしいくら俺が楽園のトップに所属しているからといって、突然こんなところでどんぱち始めたりはしない。俺は、一応ルールやモラルは持っているし、まもっているつもりだ。安界さんとの楽しい愉しい遊戯(ゲェム)は、こんな狭いところでは始められない。……おっと、これを寮監に聴かれでもしたら痛い仕置きをされるところであった。危ない危ない。面倒事はごめんだ。まあ、やるならばそれなりの舞台を整えなければならないのだ。そうでなければ、燃えないだろう?
 さて、朝食を摂り終えると、自らの部屋へ再度戻ろうと階段のほうへ歩いていた。


//


一時保存。寝る。

2013/09/24 02:13 - No.9

@tokiwa

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2013/10/01 22:30 - No.10

@tokiwa

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2013/10/01 22:35 - No.11

祷月 常盤 @tokiwa


『冬の寒さと心地よさ』


//


 冬は好きだし、寒さも好きだ。頭はクリアになるし、風も澄んでいる。そしてなによりこの寒さ自体が心地よい。
 現在、冬まっただ中の十一月後半。不定期にやってくる緑青学園の休日は、人知れず幕を開ける。

 小鳥遊呉祇の休日は、至極淡々としている。朝いつも通り七時に起床し着替え、きちんと身なりを整えてからスマートフォンのみをポケットにつっこんで寮の共有スペースで朝食を摂取しに向かう。其処には見知った顔も多く、同志たちも居れば安界らも当然居る。それはそうだ。此処は、高等部に在籍している生徒のための寮なのだから。しかしいくら俺が楽園のトップに所属しているからといって、突然こんなところでどんぱち始めたりはしない。寮の規約にも書かれているし、俺は一応ルールやモラルは持っているし、護っているつもりだ。安界さんとの楽しい愉しい遊戯(ゲェム)は、こんな狭いところでは始められない。……おっと、これを寮監に聴かれでもしたら痛い仕置きをされるところであった。危ない危ない。面倒事はごめんだ。まあ、やるならばそれなりの舞台を整えなければならないのだ。そうでなければ、燃えないだろう?
 さて、朝食を摂り終えると自らの部屋へ戻るのではなく、そのまま外へと赴いた。朝の八時半すぎ。丁度良い時間だ。向かうのはフードストリートにある、自らが店員としてアルバイトをしているカフェ『リゼンルージュ』である。
 冬の冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んでからゆっくりとはくと、吐息が白く煙り、そのまま空へと溶けていく。流石に寒い、と首に巻いていたマフラーに少し首竦めると、まるで俺の周囲を纏うように冷たい風が戯れてくるのが分かって、小さく笑ってしまった。

「――おい、ジゼル。お前絶対わざとだろ」
『ふふっ、だって呉祇くん、寒いの大好きでしょう? だからジゼルからのささやかな贈り物、みたいな?』
「寒いのは好きだが寒すぎだ阿呆」

 普通の人よりも寒さ三割増し。しかしそれもまた、やはり心地よいのには変わりないのだ。口では悪態をつくものの、くすくすと笑みを隠さずに。
 そうして今日も始まる一日の碧い空を、仰ぎ見るのだ。

「ま、今日もきびきび働きますか」


//


呉祇の休日は午前バイトで午後買い物とかそんなん。
普通な男子高生としての休日を送る、小鳥遊呉祇十七歳の冬でした。

2013/10/05 18:00 - No.12

祷月 常盤 @tokiwa


『せかい』


//


 美しき世界を、君は覚えているだろうか。美しく麗しく、愛すべくして生まれしこの世界に生を受けた君は、きっと幸せで何よりも尊い存在なのだろう。どんなに困難なことがあろうとも、どんなにつらいことがあろうとも。その分だけの幸せが君を迎え入れる筈だ。苦の先に待ち受けたるは幸。不幸の背景にあるは幸福。背中合わせなそれに、きっと君は緩やかに揺蕩っている。(「願わくば、緑青に澄んだ美しいこの“世界”で、お前たちがシアワセになれることを――」)唇より告げられし言葉は甘く風に溶けていき。そうして花浅葱の青年もまた――その、緑青の麗しくも愛すべき世界へと切なく甘く“別れ”を告げるのだろうか。


//


小話という程でもありませんが。
花浅葱、そして緑青という単語から連想できるのは勿論あいつですね。
というわけでの、ただの思いつきの文章。

2013/10/06 01:51 - No.13

@tokiwa

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2013/10/08 00:49 - No.14

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/10/11 02:54 - No.15

祷月 常盤 @tokiwa


 『殺伐とした昼休み』

//


「わたしはっ、お前みたいな奴が大っ嫌いなのです!」
「ははっ、うん。知ってるよ、古褪」

 甘い撫子の少女は、花浅葱の少年に噛みつくように、敵意むき出しにそう言った。三年生の教室がひしめくこの新館二階の廊下で、彼女は周囲に三年生の生徒が闊歩しているのにもかかわらず、よく通る声量で。勿論関係ない道行く生徒らは突然の誰かに向けられた少女の罵声に驚いて、あるいは訝しみ怪訝そうにと声の主のほうへと注目する。だがその罵声をもろに受けた少年は、野次と化している周囲を一切を遮断するかのように、ただ少女だけを一点に見ていた。最初は、少し驚いたように。しかし続いて、いつもと変わらずににんまりと満足そうにしたのちに笑い飛ばし、軽い言葉で肯定の意をなんの躊躇もなく提示した。何を言うのかと思えば、とどことなく彼は溜息じみたものを窺わせるその態度に、少女――古褪御灯はより癪に障ったのかぎりっと奥歯を噛み締め、鋭い視線を少年――小鳥遊呉祇へと注ぎながらゆっくりと御灯は右足を後方へ引く。低い体勢。それを見て、呉祇は彼女が何をしようとしているのか瞬時に把握するも、腕を組んだままその場から微動たりともせず、彼女を見下ろすかのように、白い歯を僅かにのぞかせゆっくりと楽しそうに、愉しそうに笑む。御灯は低くした体制から左手を水平に掲げ、「おいで」と小さくつぶやいた。瞬間、広げた手にはそれまで無かったそれが、ゆっくりと何かの物質を形作るように漆黒の破片のようなものが現れ構築され始める。呉祇はそれを見届けながら、笑みをより、深く濃く刻みつけた。構築された物質は漆黒で、その物質の周囲とつなぎ目を縁取るように蛍光藍が光る。その物質の形状は、まるで裁ち鋏のようで。大きく、形も非常に美しい。誰が見ても、一目でわかるだろう。あれは、普通の裁ち鋏ではないことを。

「――首切り断罪者/ジャッジメント≠ゥ」

 呉祇はそれを見た瞬間、納得したように呟いた。と、同時。それまで御灯の手の元で宙に浮いていたその裁ち鋏を手に取りそのまま高く跳躍――彼女の瞳は尚も呉祇を捉え、一直線に呉祇へ、正確には呉祇の首元に刃を振りかざした。その早さは、本当に一瞬としか表現が出来ない。しかし呉祇の首元を捉えた瞬間、その刃が唐突、はじかれるような衝撃を御灯は体感する。その所為でびりびりとした痺れが裁ち鋏を介して左腕に伝わる。結果的に一瞬の攻撃では彼に傷をつけるどころか首元に二つの刃を差し入れることさえ出来ないままに床へと着地する。改めて呉祇を見ると、彼の表情は相変わらず、気持ち悪いほどの色濃い笑みをはり付けたまま御灯をただその瞳に映していた。いつの間にか疎らだった野次も集まり始め、「安界のgVと楽園のgTが戦闘を始めるような雰囲気だ」とかなんとか口伝えに広まってしまったようだ。しかし、呉祇はそんなことはどうでもいい。彼の瞳に映るのは、古褪御灯ただ一人。

「おいおい古褪。お前らしかぬぬるさだな? そんなんじゃあ、俺を傷つけるどころか俺を、この場所から一歩も動かすこともできねェぞ?」

 その瞬間に、御灯より発せられる殺気のようなそれにぞくり、と呉祇は背筋を震わせる。しかしそれにも、彼はくすりくすりと絶えず笑みを浮かべ続けた。

「お前が例え俺を殺そうとして、ジャッジメントを遣おうとマッドハッターを遣おうと、チェシャ猫を遣おうと。お前と共に在る『住人』の力を駆使したところで決してお前は、俺に傷一つ付けることは出来ない。俺に『ジゼル』が居る限り、俺と対等に戦い、俺と対等に殺り合い、俺を『 』にしてくれる奴はもう既に、決まってるんだ。それにお前には、――荷が重過ぎるだろ?」

 俺を、殺すだなんて。
 そういった呉祇の言葉に更に眉をしかめ、「だからっ! お前のそういうところがまた、大っ嫌いなのですよ!!」その御灯の声は悲痛そうで、叫ぶように、しかしその中にも変わらず怒りと憎しみとが入り混じる。それに呼応するかのように、裁ち鋏の形状もまた少しずつ、大きさを含め変化を見せる。美しくも、荘厳。持ち手を左右持つと、その裁ち鋏は静かに、一つが二つへと、左右に分解される。御灯は逆手持ち、構える。それを見て呉祇はふふん、と笑みを浮かべて「お前がそんなに俺と戦争したいなら、受けてたつぜ」と、心から楽しそうにこたえては、初めてその場から足を動かした。

「――妖刀、風神殺し/ラングレン=Bばっと」
「まあまあ、待ってくれないか」

 う、まで言いかけて唐突に遮られた。流石にそのことに呉祇もまた怪訝そうに眉を顰めて、聞こえてきた声のぬしのほうへと視線を這わせた。しかし、視なくても分かる。視線を向けなくても、その声には昔も今も良い意味でも悪い意味でも聞き馴染んだものだ。

「……、おい九条。盛り上がってたところにわざわざ水さすなよ。折角、愉しめそうだったのに」
「はは、悪いな小鳥遊。だが校舎内で暴れられても困るんだ、先代安界トップみたいに、俺もまた胃薬常備とか勘弁だ。まあ、今日は場を収めてくれないか。次は広い場所で、他の生徒の危害が及ばないところで俺が、直々に相手してやる。なあ小鳥遊、悪い話でも、ないだろ?」
「ッ、!! れえじ!! 邪魔するななのですっ!!」

 お前は黙ってろ、と御灯は現れた安界のgT保持者、九条黎二に牽制された。呉祇はというと、深い深い溜息をついては「興が削がれた。お前が胃薬常備とかそれはそれで面白いが、まあ――今日はお前の言葉に免じて見逃してやるよ。その代わり約束は守れよ」とやるせなさを表に出しつつ、そう答えた。見ると、御灯が手にしてあった二対とも表現できるジャッジメントは、すっかりと消えてなくなっていた。勿論、と黎二が答えたのを承諾する形に呉祇はなり、先ほどまでのやる気と愉快げなそれは一気になりを潜めたかのように欠伸を一つした。

「俺、どっちかというと喧嘩ふっかけられたいわば被害者なんだがな」
「それは悪かった。――ほら、御灯。行こう。あとで説教がある」
「っ、……だ、だって、」

 言い訳はいらない、と一蹴された御灯はそのまま、先ほどの威勢はどこへやらとすっかりなりを潜めてしまった。しゅん、と効果音が付きそうなくらい落ち込んだそれに、呉祇は心の内で珍しいなあとか思いつつ、二人踵を返し遠くなる背中を一瞥してはその足を階段のほうへと向けた。本来の目的そして目的地。屋上で昼以降の授業をサボろうとのいうが本来の目的であったので、それを遂行しに。周囲の野次はいつの間にかはけていて、まるで何事も無かったかのような日常が再開される。此処は、そういう所だ。

「――あー、ねみ」

 呉祇が一歩ずつ一段ずつ階段を上っていって、屋上の扉へと手をかけた瞬間、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。



//



呉祇と御灯と、時々黎二くんが登場する小話、『殺伐とした昼休み』でした。
内容は題名の通り、昼休みに呉祇と御灯がばったり会って殺伐な雰囲気になる小話です。もっと良い題がぽんぽん出てくればいいのに私のセンスは相変わらず残念です。
またまた前回に引き続き、はるちゃん宅より黎二くんを少々お借りさせて頂きました! 口調に問題がありましたら遠慮なくおっしゃってくださいうわあっ、もうっ、黎二くんの口調に自分でも書いてて違和感たっぷりでもう申し訳なくてっ><
何か不備など有りましたら遠慮なくお知らせ頂ければと思います。毎度毎度、本当に有難う御座いますっ。

2013/10/15 02:32 - No.16

@tokiwa

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2013/10/17 01:43 - No.17

祷月 常盤 @tokiwa

「――――ハッ、よェえな」

 苛立つ声色を隠さず、唾を吐き捨てるように。足元に転がった、まだ生きているのか既に屍と化しているのか分からないソレを冷たく冷めた緑青色で見据えた。少年の瞳は、両とも美しい緑青色に見えるがよく観察してみると、左の瞳は少々紅みがかっているようにも見えた。不思議ともいえるその色合いの変化に思わず目を奪われそうになるだろうが、しかし生憎、この場にはその瞳の持ち主である彼と、先ほども記した生死の境をさまよっているであろう、彼と同じ年くらいの少年しか居ないのである。彼――小鳥遊呉祇は、足元に転がる少年が微動たりとも反応がないことに更に苛立ったのか舌打ちをして、そして何を思ったのか一番少年の近くにあった右足をゆっくりと振り上げ――地面に転がる少年の腹を思いっきり踏みつけた。瞬間、小さな呻き声のようなものが少年の唇からもれ、どうやら丁度みぞおちの辺りに勢いづいた足が入り込んだらしい。咳も出来ないほどの苦しさなのか少年は呉祇の脚が離れたことに横向きに身体の方向をかえ、そのまま小さく蹲る。しかし呉祇は相変わらずそれにも極寒の如く冷めた瞳で見下し、そうして次に浮かせていた右足を次は、ゆっくりと後方にひく。勢いづけて、そのまま少年を蹴とばした。まるでサッカーボールを蹴るような、躊躇いの無さ。少年は一気に向こう側まで勢いよく吹っ飛び、後方に有った樹木に背を打ち付けて、先ほどとは違い痛みに呻く様子すら見せずにずるり、と力を抜かした。完全に意識を手放したのか、それともお陀仏したのか。しかし、呉祇にとってその少年の生死なんてものは至極どうでもいいのだ。

「てめェが俺に喧嘩売ってきたんだろ。ならもっと、俺を愉しませろよ」

 愉しませてくれないなら、死ね。
 クソが、と辛辣なる毒をはいて、その表情は無に等しい。冷笑ひとつさえ浮かべず、しかしその無の表情の中にもそれは侮蔑であったり、或いは憐憫、或いは憎悪、或いは哀憫であったり。そういった様々な感情も見え隠れしているが、きっと彼のそれに気づく者なんて、他に誰も居ないのかもしれない。しかし彼はそれでも良いと思っている。小鳥遊呉祇≠ニ色部氷奉≠ニいう全く違うようで、実は端からゆっくり混ざり合うこの『存在』を認識出来ているのが自分自身と、そしていつも自身と共に在り続ける『風/ジゼル』だけでいいのだと彼は思うのだ。そしてそれだけで、彼を『救う』ことが出来るのだ。色部氷奉ではなく、此処では小鳥遊呉祇として生きていくことが出来る。それが例え、一時の現実からの逃避であったとしても。

「……ほんと、この世の中この世界。クソすぎて、反吐がでる」


 嗚呼、はやく。はやく、誰でもいいから俺を、風にしてくれ。


 『この世界からの別離(わかれ)を求める、とある少年の話』


//


呉祇が中等部一年生の、とある日の小話。
題の通りです。補足を致しまして、中等部一年に上がりたての春なので、呉祇はまだそこそこ荒れてます。
突然同学年の少年に喧嘩をふっかけられた呉祇が、その少年を再起不能になるまでめっためたに打ちのめす。少年は最後死んではいません。
暴力的なシーンですが、呉祇の持つ孤独を垣間見ることが出来れば、と思っております。

2013/10/17 01:44 - No.18

祷月 常盤 @tokiwa


「――おはようございます、世界のみなさん」

 一日の始まりは、とある女性もしくはとある男性の一言によって産声をあげる。
 水のように、あるいは氷のように透き通るその声に、きっと誰しもが耳を傾けていることだろう。

「愛すべき多くの同胞たちの幸せを、心を籠めてお祈りしております」

 慈悲深く、慈愛に満ちた美しき最後の龍。
 全知全能、すべての創造主たる最高神が『選定』せし、この世を見定め見守りし悠久たる存在。

「嗚呼、――お前たちに神のご加護があらんことを」


 『美しき龍の、一日の始まり』


//


我が子の中でも一番の古参であり、一番目の子。
純血の龍であり、神に『選定』され世界と共に在り続ける存在、エレフです。
エレフの性別は無であり、男女どちらでもなることが出来ます。今回は女性のバージョンです。男性バージョンはもっと横暴ですが慈悲深いのは変わりません。

2013/10/17 11:13 - No.19

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/10/18 00:56 - No.20

祷月 常盤 @tokiwa



 それは、きっと些細なきっかけだったのだと思う。
 そして、きっとそれは自分が悪かったのだと思う。

 昴くんと喧嘩をして、口も利かないままもう、四日が経った。


『あなたのこえ』


 綴織咲々にとって、蓮条昴という男性はとても大切な存在である。咲々の性格を知る者にとっては、彼女に恋人が出来るだなんて思いもよらぬことであろうが、生憎幸か不幸か咲々には別段、特別に「友人」という存在は居ない。知り合いこそ多いが、しかし友人ともなるとまた存在が違うのであり、そして咲々にとって、友人という枠の存在は必要のないものであると常々思っているのだ。しかもそのことを幸いだと思いさえしても、不幸とはきっと思わないのである。彼女にとって親しみの意である愛すべき後輩の宮綛忍や、その彼の恋人である音瀬茉莉という存在も、きっと咲々にとっては厳密には「友人」ではないのだ。親しいけれど、友人ではない。しかし、だからといって簡単に知り合いと形容するのも些か違和感を覚える。なので、取りあえず分からないものは後で考えることにした。隅に、置いておくことにした。
 本題に入るとしよう。綴織咲々は、さきも言ったように恋人である蓮条昴と喧嘩をしてしまった。口も利かず、今日でもう四日目。喧嘩した理由はもう覚えていないほどそれは些細すぎるもので、きっと直ぐにでも謝れば此処まで悪化することはなかったはずなのだ。しかし、意地を張ってそのままだらだらと日にちが過ぎてしまえば、謝るタイミングもまた、だらだらと先延ばしになってしまい。そうして、とうとう謝るタイミングを失ってしまったのだ。おまけに相手は会社を経営しているいわば経営者で、忙しいことこの上ない。運の悪いことに彼の忙しいタイミングと合致してしまったのか、彼が普段より帰宅する時間もかなり遅かった。逢わなければ、口も利かない。いや、利けない。
 そのことに、咲々の中にある焦りと不安と寂しさがゆっくりと、しかし確実に大きくし蓄積されていった。

 どうしよう。このままでは、このままでは昴くんに本当に嫌われてしまう。いや、もう既に私の事なんて嫌いで、私なんていなくなってほしいって、もう視界にさえ入ってこないでほしいって、思っているかもしれない。拒絶されたかもしれない。はやく、謝らなきゃ。はやくはやく、はやくしないと、すばるくんにすてられる。

 常々より、それは抱いていた不安であった。咲々は人を愛することを知らないし、愛されることを知らない。昴とはたまたまとあるカフェで出会って、紆余曲折があったものの真剣に交際をするようになって。最初は昴が咲々を見初めた出会いだったが、今では咲々も昴にとても惹かれている。しかしその一方で、若くして会社を立ち上げたという素晴らしく立派に自立している彼には私ではなくても、もっと優秀で聡明で美しく、可憐な女性がいたのではないかと。彼の足を引っ張ってしまったらどうしようと。仕事の邪魔になってしまったらどうしようと。そんな不安が蓄積し堆積し。しかし、それは彼の惜しみない愛情によって、少しずつ溶かされ、融かされていった。彼の温もりは、とても居心地がよかった。彼がいれば、彼さえいてくれれば、綴織咲々という『世界』は、きっと完遂するのであろうというほどに。

「ぁ、っ、……す、ばるく、っ、」

 玄関先。鍵が開錠する音がしたので、彼を迎えるために駆け足で向かう。重々しく開いた扉はまるで自身の心の軋みを現しているかのようだった。彼の顔をおずおず見上げるも、彼と目を合うことはなかった。
 それが更に心の軋みを大きくしていき、勇気を出して彼の名前を小さな声だが呼びながら小さく手を伸ばしても、しかし彼は咲々をすり抜けそのまま自分の部屋へと行ってしまった。がちゃり、と閉じられた彼の部屋の扉。そのことに、まるで彼の世界から追い出されたかのようなそんな錯覚に陥って。へたり、とその場に座り込んでしまった。
 かんぜんにきらわれて、しまった。
 それだけがもう脳内を占め、ぐるぐるとぐるぐるとまわっていく。視界がゆっくりとぼやけ始め、気づくとぽたりぽたりと、とめどなく涙があふれてきて。唇より漏れる小さな嗚咽も、もう咲々の意思だけでは止めることが出来なくなっていた。

「ッ、ひっ、う、……っ、す、ばるくん、っ、すばるくん、っ、やだっ、きら、きらいに、ならなッ、で、っ、……ぁっ、ごめ、っ、……ぅっ、ごめんなさっ、ごめ、っ――、す、てな、っ、で」
「――ばかっ、」

 がちゃりという音と共に唐突に、ふんわりと抱きしめられるような感覚に陥った。同時に今もっとも聞きたくてたまらなかった、そしてもう二度と聞けないと思っていた愛しい彼の声が、鼓膜を震わす。鼻孔をくすぐる、彼の匂い。大好きなその匂いを感じたと同時、ぶわりと更に涙腺が緩んで涙にぬれた顔を彼の服にうずめた。「すばるくん、す、ばるくっ、おねがい、おっ、ねがいだから、ッ、ぅ、きらい……っ、ならなっ、で、ごめんなさいっ、ごめ、っ、ぅっ、」「もう謝るな、咲々。俺もごめん、むきになりすぎて。嫌いにならないし、絶対咲々のことすてないから、本当にごめん、っ」その言葉に、久々の彼の声に、安心してはまた泣いた。「愛してるよ、」とその言葉にもやっぱり泣いて。彼の腰あたりの裾をぎゅっと握りしめて、顔を押し付けて。彼のシャツが涙で濡れてしまっていることだろうが、今は彼にぎゅってしたかったし、ぎゅってしてもらいたかった。



 四日ぶりの、あなたのこえ。



 暫く咲々は、この反動によってなのか彼の手を積極的に握ったり移動するとき裾を引っ張って一緒についていったり、寝るときも自らすり寄ってきたりと度々甘える様子が見られたとか。



//


漸くの加筆修正版です。
改めましてゆーちゃん宅より、昴くんとお名前だけですが茉莉くんをお借りいたしました! 有難う御座います(*´∀`*)
咲々のデレ期はきっとその後しばらく続いたと思います。かわいい。昴くんイケメンすぎて咲々代われ(
有難う御座いました!(*´ω`*)

2013/11/03 01:13 - No.21

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/11/04 23:09 - No.22

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/11/10 23:49 - No.23

祷月 常盤 @tokiwa


「――ほんと、元気ですね」

 何処までも何よりも黒く昏い影は、音もなく静かに、しかし確実に口元に弧を描きくすりくすりと侵食し侵蝕し、侵襲されるかのような錯覚に陥ってしまう。美しくも禍々しい、漆黒。弧を描く唇で、嘲るように。しかし、その奥深くには言い知れぬ愛もまた含まれていることに、きっと誰もが気づかない。気づいたとしても、理解は出来はしないのだ。素人には。他人には。誰にも、この男を理解することなんて出来はしないのだ。
 そうして影は、眼前に居るエレフを見やった。エレフの姿は、影にとっては見慣れた男性の姿をとっていて、エレフは女性の姿のときもそうであるが、麗しいという言葉が似合う存在であった。
 エレフと影。互いの因縁は、樹木の根よりも複雑に絡み合っている。ほどくことなんて不可能であるかのように、それは雁字搦めだ。エレフは影の眼前に刀の切っ先を向け、刀より鋭く尖った目つきで見据えるそれに、影は臆することもなくそういったのだ。元気ですね、と。刀の切っ先が向く影の瞳まで、あと一センチもない。しかし、この状況にでさえ影は、薄気味悪いという表現が似つかわしく薄く笑みを浮かべていた。

「何しに来た、影」
「はは、そのような他人行儀な言葉に私は少し傷つきましたよ、エレフ。何しに来た、と問われれば、勿論私はエレフに会いに来ただけですよ」

 他意だなんて、そんなものはありません。そう付け足して、にっこりと。不気味に笑みをはり付けていくのだ。


//


影とエレフ。エレフは今回、男性の姿を取っております。
この二人は本当に書いてて楽しい。影のエレフに対する愛は、恋愛的なものでは決してありません。そんなどきどきわくわくなものではありません。エレフは影に対して敵対心しか持っていません。憎悪に近いかも。

2013/11/11 01:59 - No.24

@tokiwa

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2013/11/12 02:33 - No.25

祷月 常盤 @tokiwa


 くらやみ。
 小さな窓でしか光を得られない薄暗いこの場所は、あの日を、あの時を嫌でも思い出させる。嫌で、厭で、きらいで、つらくて、いたくて、くるしくて、せつなかった。何処にも行けやしない。何処にも逃げられない。耐えるしかなかった、非力な自分。ああ、思い出すとイライラしてきた。もう昔のことで、今はあの頃より弱くない。強くなったと寧ろ自負しているが、だが結局、今の俺のこの状況というものはやはり昔と変わらないのだろう。抗うすべなく、ただ終わるのを祈るように待つばかり。

 結局俺は、やっぱり弱いままなんだろうな。


【 ねがいをきいては、くれないか 】


 ここは、簡単に言えば牢だ。電気なんて勿論有る筈もなく、大まかな時間帯は格子のかかった小さな窓から見える、空の明暗のみが手掛かり。夜になれば此処は真っ暗闇になるため寝るという行動一択なわけであるが、簡素な作りのベッドに横になっても、まだまだ肌寒いこの季節ではあるが薄い布団を掛けても特に暖をとれるわけではない。学生時代は、いつでもどこでも、どの季節でも構わず熟睡出来て、しかもちょっとやそこらでは目が覚めない程の(自分でいうのもあれだが)寝ぎたなさだったが、今はからっきしで熟睡という熟睡に落ちることがない。昔から、温度感覚というか外気感覚が鈍いためか多少寒くても暑くても問題なく過ごせるのだが、以前このことがうっかりあいつに露見してしまい、さんざん説教じみたことを言われたっけかと、苦笑を僅かにうかべた。温度感覚が鈍いということは、体温調節がうまく働かないんじゃないかと心配、というよりは怒鳴られるように問われたが、俺にとって別に大した問題ではない。実際、中等部や高等部時代は、春夏秋冬構わず薄着で屋上でよく授業をサボっていたしそのまま寝落ちすることも毎回のようにあった。感覚に疎いし鈍いのは特には今まで支障などなかったが、しかし、今考えてみるとそれは逆に危険信号を無視しているということだと気づいて、なんとなく溜息をついた。まあしかし、今更どうすることも出来ない。温度感覚が鈍いというだけで、今更俺はそれくらいでは死なない自信があるのでこの際横に置いておくことにしよう。考えるのも、面倒くさいというものだ。ふと左耳を癖で触ると、相変わらずそこには、以前から大事につけていたあのプレートの耳飾りは無かった。どうやら家を潰す際の戦闘で落としたらしい。落としたというか、ちぎれたというか。だから左耳たぶには小さな傷痕がある。あれは、一体どこにいってしまったのだろうと思ったが、自分の元にもうかえってくるわけがないと分かっているので早々に諦めたのだ。愛着はあったが、仕方がない。いつまでも縋っているのは、違うだろう。

 少し明るみが格子を隔てた窓からさしてくることに、ああ、やっと朝か、とベッドに仰向けに寝ながら膝をたてて脚を組みながら、幾度目かの夜明けを体感する。結局、夜は一睡もできなかった。まあ昼間に寝ればいいかとだけ軽く考える氷奉の脳内は、とてもではないが今現在、八十神の脱走者として牢に入れられている人間の普通の思考ではなかった。普通はもっと追いつめられるような思考に至る筈であるが、彼はひどく、そして飽くまでも冷静であった。氷奉は今、この牢から出る出られないよりも、妹である宵燈のことや、能力抑制器具レクターで能力が制限されている所為でまたジゼルとの対話が不可能になってしまったということと、それから――旧友や、何より『楽園』の仲間たちのほうが、心配であった。宵燈は、どうやら現在緑青学園の大学部に通っているらしい。同時に、旧友が率いていた『安界』(今はどうやらまた違う組織名になったらしいが、便宜上ここでも『安界』と表記することにしよう)のメンバーの一部が在籍している組織に身を置いているらしい。まあ、なんにせよ手ひどい扱いは受けていないようであるから一安心であるし、なにより我が旧友が居るのであるから、酷いことにはならないだろうというわけだ。ジゼルとは、まったくというわけでもないが会話が出来なくなってしまった。右手にはめられたブレスレット状のと、首に付けられたリング状の二つのレクター。強制的に縛られているような感覚は、どうしても慣れることが出来ない。この二つのレクターを付けたところでまったく能力を遣えなくなったわけではないし、さきも記したがまったくジゼルの声が聞こえなくなったわけでもない。だがやはりこの、強制的に能力を制御される感覚は至極煩わしく不便ではあるが。
 それから、八十神を脱してからしばらく、ばらばらになってしまった楽園の仲間とは、それ以来誰とも再会ははたしていない。生きて逢おうと、再会の約束をしたがそれは果たせれぬままに、俺は再度この八十神へと戻ってきてしまった。戻ってきたというよりは、強制的に連行されたというほうがニュアンスは正しいが。だから、必然的に俺があいつらとの再会の約束を反故にしてしまったというわけだ。あいつらが外へと脱することが出来て、各々、目標や願望を胸に日々を生活していることだろう。願った“外”という場所に、希望を持ち続け願いをかなえた奴もいるかもしれないし、逆に、絶望に打ち砕かれたやつも、居ることだろう。“外”の世界は、必ずしも幸福に満ちているわけではないのだ。それは、あいつらがよく分かっているはずだ。それでも、構わずに最後まで俺についてきてくれたことに、誇りを感じることに変わりはない。自慢の仲間だ。
 旧友に対しての心配は、まあ色々である。いや、しかしこんなことがあいつに知られてしまえば、なんとなく鼻で笑われるかばかにされるかのどっちかだろうなと思うから、あえて此処で詳しくは記したりしない。しかし、唯一といっていいほど対等に渡り合える友であり敵でもあった彼は、なぜこんな俺を見捨てないのだろうかと疑問にも、思うのだ。

「――――別にお前は、言ってみれば、まったく無関係なのにな」

 幾ら俺を止めるといっても。

「嗚呼、でも。お前が相変わらず、俺を止めてくれるっていうんなら。俺の最後の、最期の願いを、――聞いてくれよ」

 暗黒色に染まるブレスレットのレクターを付けている右手を、ゆっくりと天井へと伸ばし。唇を、噛み締めて。
 ねがいをきいては、くれまいか。

 けれど俺がその願いを本人の前で口に出来るのは、まだ少し先のことだろう。
 ああ、殴られるかも。そういった覚悟もきっと必要になってくるな、と小さくわらった。
 日は、ゆっくりとのぼってくる。


//


小鳥遊呉祇としてではなく、色部氷奉として八十神へ帰ってきてから(というよりかは強制送還されてから)の小話、【ねがいをきいては、くれないか】でした。
きっと、八十神に強制送還されるときめっためたにやられるんだろうなあ、と思って余談というか補足ですが首に包帯ぐるぐる巻いてます。その上にレクターつけてます。てか所々包帯だろうな。あと牢にぶち込まれてます。暫く牢生活です。
氷奉は願いを口に出来る日の前に、きっと本名を自分の口から明かすことが最初のイベントとなるでしょう。あと氷奉が願いを本人の前で口に出来ないのは、なんとなく、やはり拒否られようが拒否られまいが結局は更なる重圧を相手に押し乗せてしまうということが心に引っかかっているからです。
牢を出てからは政府のとある組織に引き渡され無理やり在籍させ二十四時間休むことなく監視させられます。自由に行動できません。でもやっぱり氷奉は氷奉だからかなり自由です()
てかあれですね……目線表記が二種類(「俺」と「氷奉/彼」と記している)だから読みにくい感じが……、それから台詞が異様に少ない。
直接名前の表記はしておりませんが、はるちゃん宅の黎二くんを少々お借りいたしましたっ! 毎度申し訳ない上に本当にありがとうございます!

追記、屑雷の小話書く予定が知らない間に氷奉の小話書いてたおっかしーなー(((

2013/11/18 00:54 - No.26

祷月 常盤 @tokiwa

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2013/11/29 23:39 - No.27

祷月 常盤 @tokiwa



 今の俺があるのは、紛れもなく首領である冠解さんと、副首領の逝々さんのお蔭だ。誰もが否定しようのない事実で、誰の否定も受け付けない。彼らがいなければ俺は、それは永遠に、生きることも死ぬことも許されず、ただ痛みと苦しみに耐えながらの一生を余儀なく強いられていたのだと思う。実際彼らが救ってくれるまでの途方もなく永かった(いや、あの中では時間の流れとかは分からなかったが)俺にとってあの苦しみは絶望としか言いようのないそれは、今も絶えず、錆や、或いは病のように、俺を蝕み続けていたのだろう。
 冠解さんが、俺という存在と居場所を知っていなければ。逝々さんが、封を絶ち斬ってくれなければ。

 俺はあのまま、ひと足早い地獄の底へと、堕ちてしまっていただろう。


【 雷鳴轟き、稲妻光る 】


 俺は元々、鳴神という雷神の御遣い、いわば眷属のような存在で、俺は常に鳴神に寄り添い彼の補佐のようなことをする日々であった。それがもういつのことかはとうの昔すぎて覚えてはいないが、あれはきっと俺にとっての『幸せ』であった。気儘に空の、雲の上で日々を過ごしていたが、それからほどなくして人間というものが誕生した。彼らは空が怪しく光るのを恐れ、いかずちを嫌厭し、鳴神を静かにも激しく拒んだ。彼の哀しみは、切なさは、俺では計り知れない。それでも俺たちは空の上で適度のいかずちを俗世へ投げ入れ、人間の様子とその生活を眺めていた。
 そんな、ある日であった。俺は雷雲を伝って移動をしていた際、どうやらとある人間の男に俺の姿を見られていたらしい。その男は人間の姿をしているにも関わらず異端の力を身の内に宿したいわば能力者と呼ばれる人間で、結論を言ってしまえば、俺はその男に姿を見られた数日後に男は同じような能力者を集め、雷鳴轟く嵐の日に俺はとある祠へと封印された。当時俺の力は鳴神によってかなり抑制されていたために、全盛期であった俺とは程遠い力量であったので、当時は俺を封印することは容易かったのであろう。それでも、封印される直前にその男以外は、すべて殺してやったが。

 祠の中は、前述した通り死ぬことも生きることも許されないようなひどい苦痛といわば絶望しかなかった。何年も、何十年も、何百年も。下手したら、何千年も。その内鳴神が抑制していた俺の力が解放されたことが分かり、鳴神は俺が居なくなってから代替わりをしたと祠の中に居ても直ぐに分かった。彼は最期に何を視、何を想って世界から別れを告げたのか。俺には、解りかねた。痛みに耐え、苦しみを堪え。いつか必ず、何としてでもあの鳴神の元へと帰ろうと思っていたが、もう俺の知っている鳴神ではないということを抑制されていた力が戻ってくると察してしまい、俺に残されている居場所はもう何処にもないことを悟ってしまった。

「――――嗚呼、なれば最期に、あの男だけは。あの異能遣いだけは」

 殺してやらなければ。
 何としてでもこの祠の中から脱却し、奴を殺さなければ。そうしたら俺は、救われる≠フだろう。きっと、そうだ。俺はあの男を、異能遣いを、死んでも決して赦しはしない。憎き存在。嗚呼俺は、――飲み込まれる。黒い感情に、黒い空に、黒い海に、黒い世界に。
 溺れゆく。

 だがそれも、今の俺にとっては好都合というものか。

 喉が引き攣るような、自分の不気味な笑い声が、耳に届いた気がした。


「……――――ちがいない、此処で合ってる。逝々、遠慮は要らない。斬れ」
「ああ。……まあこれじゃあ、誰にも見つけてもらえずに長いこと独りでいたのも無理はないね。さて、彼を久方ぶりすぎる下界へと、いざなってあげよう」


 それは、唐突であった。何の前触れもなく、ずっと暗闇であったこの場所に漏れ出る眩しすぎる光が俺に襲い掛かった。


▽▲


 その後の話ではあるが、冠解さんと逝々さんが祠の封印を断ち切ってくれたとき、俺は既に自我や理性はとうに失くしていて相当暴れまわったらしい。らしい、という曖昧な表現は、それは俺が申し訳ないながら覚えていないからである。文字通り天地を揺るがし、ストッパーを失った俺の力は本来あるべき雷獣としての力そのもので、俺を諌めるのに半日は費やしたと言っていた。それと同時、逝々さんはそんな俺を笑顔で「躾けのし甲斐がある」ともこぼしていた。確かに、俺はその後、行く宛てなんて有る筈も無い俺を冠解さんと逝々さんが導いてくれ、そこで主に逝々さんにこっぴどく扱かれたし今も同じようなものであるのは否定できないし、否定するつもりもない。

「せやから、俺はほんまに生涯かけてでも逝々さんや冠解さんにこの恩を、返そう思うてはるんです」
「お前は本当、俺が言うのもなんだけれど物好きだねぇ。良い方向へと躾けることが出来て俺は嬉しいよ、屑雷」
「……、まあ好きにしろ。お前が居たいならいれば良い。ついてきたければついてくればいい。屑雷よ、すべてはお前の自由だ」

 今でも、雷雨振りゆく悪天候の日は昔のことを思い出す。嘗て俺の仕えた鳴神や、あの忌まわしき異能遣いの人間ども。それを思うと、熱が瞬間的に引いていき、冷めてくるような感覚に囚われる。自分でもどうすることが出来ない程イライラしては、仲間に迷惑をかける。それを知っているけれど、自らコントロールは出来なかった。それでも仲間たちは受け入れてくれたし、今や彼らは慣れつつあるらしい。流石としか言いようがない。殺してやろうと散々思ったあの異能遣いのことだが、当たり前の話、もう既に死に絶えたという。彼の子孫が居ると聞き、一度その顔を拝みに行こうと思いたち、行動に表したりもした。結果あの男の何代目にあたるか分からない子孫は未だ子供で、まあ、挨拶も兼ねて崖の上から突き落としてやったこともあったし、後に派遣されたとある学園で再び会いまみえた話もあるが、これはまた別の話。

 今の俺があるのは、冠解さんと逝々さんのお蔭で。俺はそれに生涯かけても構わないから、恩を返していきたい。
 それは義務や強制なんかでは決してなく、紛れもなく俺自身の強い意志であるのだ。

 雷鳴轟き、稲妻光る。
 それは、二重の意味で忘れてはならない、昔の話。


//


屑雷と時々冠解と逝々の小話。
目線は常に屑雷です。いわば、彼らが初めてであった日のことと、屑雷の過去です。
ぐだぐだ感が否めないが問題ない(

2014/02/10 03:32 - No.28

祷月 常盤 @tokiwa

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2014/02/19 02:23 - No.29

祷月 常盤 @tokiwa

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2014/02/21 16:51 - No.30

祷月 常盤 @tokiwa

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2014/03/15 02:06 - No.31

祷月 常盤 @tokiwa

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2014/03/22 02:33 - No.32

祷月 常盤 @tokiwa

嗚呼。深くて昏い、水の底。僅かに差し込む光に手を伸ばすけれど、それに気づくものは誰もいない。唇から洩れる気泡をただ目で追いやり、そうして、静かにその双眸を閉ざしゆく。このまま溺れてしまうのだろう。誰にも気づかれず、ただ、ひっそりと。だがそれもまた、いいような気がしてきた。
 ごぽり、と。ああ、いしきが、せかいが、――うすれて

「――別れをつげよう、だなんて。袮澄さんや鶴綺さんの前で、そんな戯言をぬかすなよ。後輩くん」
「……ぁ、れ、……さ、? ――げっほげほっ、がはっ」

 今にも落ちてしまいそうだった朦朧たる意識の中、強い力で唐突に引き上げられて、わけもわからないままに瞼の裏に差し込んだ強いひかりに気を取られながらも、聴きなれた声色に必死に瞼をこじ開ける。だが生憎の逆光で相手の顔は暗く影がうつり、しかし彼が、自身の先輩である恋日永司であることは難なく察することができた。多量にのみこんでいた水を一気に吐き出すことで、咽て苦しい中にも難なく呼吸をしている自分に、嗚呼、生きているんだと。そう感じ取った瞬間、再び意識が埋没してしまいそうになっていた。


++


久しぶりにメビに来れたので、息抜きがてら、溺れるはなし。
時間とれなくてスレの維持が出来なくて、でも支援して下さっている方々がいらっしゃって。
すごくありがたくて、同時にすごくもうしわけないなあ、とおもうばかりです。

2014/04/19 23:31 - No.33

@line

【投稿者-line-により削除】

2015/03/21 15:22 - No.34

祷月 常盤 @tokiwa

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2016/07/10 01:51 - No.35

祷月 常盤 @tokiwa

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2018/03/11 00:28 - No.36

祷月 常盤 @tokiwa

 昔から、時々呉祇を恐ろしく思っていた。本人に告げたことはなかったが、他愛もない話をする中にも彼の心なんて見えてこなければどこまでも黒くて、そして彼の瞳が何を映しているのかがまったく分からなかった。けれど呉祇は心の中にある何かを一心に思っていて、それにただただ一直線に向かって歩いているんだろうなということは、友人として共に過ごした時間がたとえ短くても、ある程度は気付いていたはずだった。だがそれを自分は理解できなかったし、彼が外に出たいというある種信念めいたものを持っているのも、気づきこそはすれ、やはり理解は出来なかったし是とは思えなかった。それを理由に、最初で最後の喧嘩にしては激しすぎる異能のぶつけ合いをした結果、ドラマや映画やアニメであればそこでお互いを理解し合い健闘を称え、より友情が一層深まるというお約束ともいえる展開になったのであろうが、現実は残念ながらそうはならなかった。呉祇とはそのまま、今まで面白いくらいに一緒になっていたクラスがあっさりと別れてしまったことを皮切りに、目も合わせず顔も合わせず、友人であったことがまるで夢か何かであったかのような他人へと戻ってしまったのだった。

 それからも、呉祇の想いやその時の言葉を考えに考えて考えて考え抜いて、気づけば中等部を卒業し、そしてまた気づけば高等部も最終学年へと差し掛かっていた。その間の、呉祇と他人へと関係を戻してしまいクラスも別れた中等部二年のとき。新たに外から来た一人の転校生がいた。転校生という存在自体はこの学園においてもはや日常茶飯事に近いものであるので、別段珍しくはないのだが。その転校生と呉祇が一緒にいる姿を見かける回数が少しずつ多くなったと思う。自分とつるんでいた頃とは想像もつかないほど、呉祇は今までにないくらい、まるでそれこそ憑き物がとれたかのような楽しげな表情を浮かべているのが不思議で仕方なかった。それと同時に、ああ、彼は少なくとも僕よりも呉祇のことを理解し始めていて、僕が出来なかったことを彼は短い期間で出来てしまったのだろうと思うと、言い知れぬくやしさのようなものも湧き上がってきたのを今もまだ覚えている。だからこそ高等部に上がって、自分が安界のナンバー保持者としての地位を受け取り、そして自分が立っている同じ場所に彼が、九条黎二が居ることが信じられなかった。しかも、安界のトップとして君臨していた。てっきり呉祇と同じ立ち位置に居るのだから、彼は呉祇のことを自分以上に引き出していたのかと思っていたのだから、それはそれで仕方ないものだとも諦めはついたはずであったのに。違っていた。それが、なによりも衝撃的だった。けれど彼が安界のトップとして立つのであれば、呉祇とも自分と同じように友人という関係を断ち切ったのだろうと思っていた。だって、そうでなければおかしい。自分もまた、そうだったのだから。
 だが、決してそうでなかったということはすぐに思い知ることとなった。というのも、安界として楽園の行動に目を光らせ、時には異能を互いに激しくぶつけ合いながら鎮圧させ取り締まる日々を送る中、初等部や中等部の頃とは想像もできなかったくらいに楽しそうに暴れる呉祇の姿を初めて目の当りにしたからだった。一言でいうと、やはり、信じられないという言葉につきる。九条黎二と一戦を交える姿も多々見かけていたが、その時が一番彼の表情が輝いていて、生気がみなぎっていたようにもみえた。そして、同じように九条黎二が楽しそうに戦う姿に気づいたのはきっと自分だけだろう。

 そんな姿を見て、何も思わないはずがなかった。後悔しないはずがなかった。うらやましく思わないはずが、なかった。

「――――僕だって、お前を、知りたかった」

 渇いた口でやっと発することが出来た言葉は、何年も口にできなかった、願望そのものだった。
 呉祇の肩を強くつかんでいた手は次第に力を抜いていって、そのままゆっくりと手を離し、下におろす。呉祇は滿春を見つめ、そして何度目かの小さな溜息をつくものの、何かに呆れているというよりかは、何かに観念したようなものだ。風の勢いはやみつつあり、空も薄暗い雲の隙間から光が差し込みはじめる。

「……お前、ほんと、昔から不器用なところあるよな。頭は良いくせして、言葉足らずなところはほんと相変わらず。本来ならもっとうまく立ち回れる癖に、肝心なところでドジ踏むんだよな」
「……うるさい」
「ははァ、本当のことだろ。……お前とは戦わない。だがそれは、あくまでも今は、だ」
「…………」
「なあ滿春。確かにあの時大喧嘩って表現だけで片付けていいのかわかんねえくらい派手にやりあって、それから疎遠にはなったけどさ。俺は別に、お前と友達をやめたなんて一言も言ってねえし、お前もそんなこと一言も言ってねえだろ?」
「……!」

 まあ、お前は心の中ですでに友達やめてるかもしれねえけど。と小さく付け足しはするけれど、先ほどまでうつむいていた滿春が、呉祇の言葉ではじかれた様に顔をあげる。目を丸くして、いかにもびっくりしているような表情をしているものだから、呉祇は思わず吹き出してしまっては小刻みに肩を震わせて笑う。鳩が豆鉄砲を食ったような、ということわざはまさに今の彼が体現しているような瞬間なのだろうと思ったら、腹が痛くなるくらい笑ってしまった。ようやく呉祇が落ち着いたころには、こんなに笑ってしまって悪かったなと冷えた頭で思うのではあるが、滿春は黙ったまま唇を噛んでいる。それに気づいた呉祇は、ばんっ、と強めに滿春の背中をたたき、そして不敵に笑みを浮かべた。

「次は、楽園を鎮圧しに来たただの安界の、式讀滿春として来い。その時は俺も、ただの楽園の、小鳥遊呉祇としてお前と戦ってやる。それまで精々黎二と仲良く胃薬でも飲んでろ」
「………………、……。っふ、……馬鹿、黎二さんに胃薬を増やさせる前に、僕がお前をとめるよ」
「ははァ、そら楽しみだ」

 滿春がようやく浮かべた笑顔は呉祇にとって数年ぶりに見た表情で、呉祇もそれには何か悪戯でも思いついたかのような顔つきでなにやらとても楽しそうだった。そうしてそのまますれ違うようにして、滿春を屋上に残したまま呉祇はその場を後にし、薄暗い階段をゆっくりした足取りで降っていく。
 それから聞こえてきたチャイムは授業の終わりを知らせるもので、呉祇は今しがた思いついた、楽園としての行動を実行にうつすため、楽園の各メンバーに風の便りを送るまで、あと――――。


 緑青学園は本日も、安界と楽園による激しい闘争で、ある意味平和であるのだった。


++


【あー、めっっっちゃ久しぶりの呉祇だ……。メモ見てたらいつの書きかけだよって思うくらいかなり前でしかもめちゃめちゃ中途半端に書いてた小話を見つけたので、ひっそり書いてひっそりあげてみました。
 このたびはるちゃん宅の黎二くんのお名前をお借りしております…!!いつも本当にありがとうございますっ!そして改めましてお世話になっておりますお久しぶりですorz 何か、あの、ございましたらその、遠慮なく仰ってくださいね…!((
 とりあえず書けた!て感じでそのまま上げてるので、かなり誤字脱字矛盾点などあるかと思います。今後加筆修正など加えまして、改めて書き捨てのほうにも投稿できたらと思ってます。】

2018/03/11 00:31 - No.37

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