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【 わたしのせかいは、 】 - 日記

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祷月 常磐 @tokiwa


 わたしの周りはいつも敵だらけで、この学園でもそれは変わらなかった。
 けれど、中等部を出て高等部に入ってから、それまでのわたしのいた「世界」が、一変した。


【 わたしのせかいは、 】


 わたしが八十神に送りこまれた初等部の頃から、チェシャ猫はずっとわたしの隣に居てくれた。チェシャ猫の姿はその頃から今もずっと変わらずで、ああでも、そうは言うけれどチェシャ猫に限らず『御伽の住人』は今も昔も姿形は変わらない。ずっと同じ姿は、それはまるで彼らだけ時が止まっているようで。わたしにとっては、それが一種『うつくしく』見えた。けれど、わたしは別に不老不死とか、そういうものを願っているわけでもなければ望んでもいない。例えば、綺麗な景色を『うつくしい』と思うのと一緒で、時を進まずその場に留まり続け、そして確実なる存在意義を見出している彼らは、ほんとうに『うつくしい』と思ったのだ。けれどきっと、このことを誰に言っても、きっと黎二にも麗華にも、分かってもらえないだろう。これは、わたしだけが思う、わたしだからこそ思う特別なものであると思っているのだ。

 初等部のころから、わたしは人見知りであった。今もそうだけれど、けれどわたしの人見知りはきっと普通の言う人見知りとは違うものであった。わたしは、人間という存在が嫌いだった。苦手や、そういった遠慮のある表現ではなくて。わたしは、自分以外の人間を信用することは出来ないほど、嫌いだった。その原初は、例えば古褪という家からであったり。例えば、その家の人間たちの汚らしさを見たからであったり。例えば、わたしがその家の人間たちに、心も身体も、殺されそうになったからで、あったり。わたしが起こした能力発動の際の暴走は、それはそれはひどく凄まじかったと、後からチェシャ猫に教えてもらった。凄惨であったと。惨劇であったと。まだ九つの幼子がやるには、あまりにも惨たらしいものであったと。けれど、わたしにとってはそんなこと、言ってしまえばどうでも良かったのだ。わたしは、わたしに害をなした存在を「排除」しようとしただけなのだから。正当防衛にすぎない。なにがわるい。なにがいけない。


「わたしは、「わたし」を守っているだけなのに」


 わたしはこの都市に、この学園に来てからもわたしに害をなす存在を排除してきた。嫌い。きらい。だから、壊す。こわす。わたしは、おまえたちに制御され、屈服したりは絶対にしない。

「……うん? 御灯、また「こわして」きちゃったの? ……ああ、マッドハッターを遣ったんだね。だめだよ、彼の力は強大すぎる。……ん? 御灯?」
「…………、……。っ、……ちぇしゃ、だっこ」
「――、ふふ、しかたないな。ほら。……怖かったんだね、僕がもっとはやく顕現出来ればよかったんだけど、」

 俯いたまま、彼の言葉を耳にとどめながらも、控えめにそうお願いしてみた。そのお願いに、しかし彼は変わらずにっこりと人の好さそうな笑みを浮かべて、わたしをゆっくりと抱き上げる。ぎゅう、と彼の首にまるですがるように腕を回しては、じんわりと、涙があふれてくるのが分かった。いつも凡そ百九十センチ程ある彼の身長の高さで抱っこされると少し何時もと違う景色を楽しめるのだが、今日はそんな気にはなれなかった。か細い嗚咽も交じって、彼の白いシャツを涙でぬらしていく。しかし、彼は其れを気にもとめず慣れた手つきで背中を軽くさすってくれた。初等部三年生の秋。八十神にやってきて一ヶ月目。わたしは早くも、中等部に在籍していた二人の生徒を「こわし」た。

 そして、それから幾らかの歳月が流れ。わたしは晴れて中等部へと進学した。この八十神での生活も学園生活も、幾分か慣れたと思う。けれど、やはり相変わらず、わたしはわたしに対して害をなす存在をすべからく「こわし」ていった。ただ淡々と、粛々と。

「――お前たちが先に仕掛けてきたのです。ですから、その報いを受けて当然なのですよ。恨むのなら、自分のその作りの悪い頭と脳みそを恨めなの!」

 なんて言っても、もう聞こえてはいないかもしれないけれど。「行こう、チェシャ。お昼ご飯の時間が、なくなっちゃうのです」振り返って、いつの間にかそこに居る彼に驚きもせずにそう催促をしては、彼の手を軽く引く。「そうだね」と相変わらず好青年宜しく良い笑顔を浮かべては手を引かれるがまま、その場を共に去っていく。これで、もう何人目、何回目になるかは分からない。数えてもいないし、そんなことに興味なんてものは一切持ち合わせていないのだ。
 それからも月日が経つのは早く。中等部二年生になると、暫くしてとある話題で中等部中が、いや。恐らく学園中が持ちきりになった。それは、「小鳥遊呉祇」という一つ上の男子生徒が、『楽園』という反学園組織のトップに降り立ったということだ。何故それが注目されたのかと云えば、それは勿論、中等部在籍時からどちらの組織に関してもナンバー持ちになるというのは異例のことであり。楽園という組織を一体誰が設立し、今尚仕切っている大元の存在はよく分かっていないものの、けれど今ままでの過去として、楽園や安界が中等部に在籍している生徒をナンバー持ちに、しかもトップになるなど前代未聞であったのだ。そのことについて、わたしは興味を持たなかったわけではなかった。小鳥遊呉祇という男子は、それほど能力が強く、そしてそれほど有能であるということをこの話題で知るのだ。しかし、未だ逢ったことは無い。一つ学年が違うといえど、同じ校舎内であるのだからすれ違ったりしたことはあるだろうが、一体どれが誰なのかは分からない。それは、わたしが人一倍人間に、他人に無関心であるからだということも理由しているのかもしれない。しかしそののちに、彼と対面して、そして最悪な結果に終わることとなったのは、また別のお話である。



(後編へ)

2013/09/10 04:43 - No.0

2013年9月の日記

コメント

祷月 常盤 @tokiwa



 その後、中等部二年の終わりごろ。その日は、中等部の卒業式の日であった。そして同時にわたしはその日。
 学園組織『安界』のgV保持者として、壇上へ立っていた。

 わたしが安界のナンバー候補に選ばれたのは、中等部二年生の中ごろである。何故わたしがと訝しむこともあったが、しかし結果的に、受け入れることにした。理由などはない。けれど、わたしはきっと――かわりたかったのだと、ひとりそう思ったのだ。
 戴冠式は、粛々と行われた。gT保持者は、楽園のgT保持者である小鳥遊呉祇と同い年で、つまりはわたしのひとつ上であるということはわかった。しかし、それだけであった。彼とは、いや正しくは彼らとは戴冠式前に一度顔を合わせた程度で、わたしにとってはやはり「他人」であることに変わりはないのだ。gXを保持することになった同じ年の東条麗華という人も、しかし戴冠式以来は顔を合わすことはなかった。学園中が、この異例とも言われる『安界』のナンバー保持者総入れ替えの戴冠式の話題で持ちきりになった。それにはわたしのことも勿論で、特に中等部の同じ学年である生徒からはわたしがナンバー保持者であることに疑問と不満を持った声も多かったという。というのも、わたしは相変わらず、人というものに興味が無かったからであった。

 そうして、中等部を卒業して。私は進級し高等部の敷地をまたぐこととなった。
 それからすぐに、わたしは改めてトップである九条黎二と対面することとなった。わたしは、けれども最初はいつもと同じように。それこそ、わたしに害をなす人物であれば「こわす」つもりでいた。それはわたしより強い相手であっても。わたしを屈服させようというのなら、わたしは全力で抗い、そして全力で「こわし」に行く。それが変わらぬ、わたしの考えであった。
 しかし、しかしどうだろうか。彼は、彼はわたしと、真正面に向き合ってきた。初めてだった。古褪という家に生まれ、物心ついたころから今に至るまで、「わたし」という一個人を見てくれたのは、彼が初めてであった。嬉しかった。そして、泣きそうだった。いや、もう既に泣いていたのかもしれない。わたしは彼を、信じてみようと思った。九条黎二という一個人を、わたしは信じてみようと思ったのだ。

「……――ありがとう、「わたし」を認めてくれて。ありがとう」

 わたしのせかいは、ゆっくりと、色づき始める。
 鮮やかな色彩。わたしは初めて、『御伽の住人』以外とお友達が出来た。いや、しかし彼は友達というよりも、どことなく兄のような存在であったのかもしれない。家族というものがわたしにとってどういう物か分からないのではあるが、しかしどことなく、彼のような兄がいたらよかったと、心密かに思うのだ。こんなこと、今は恥ずかしすぎて言えない。それからは、同じ学年である麗華と、黎二の仲介もあってかなんとか対面をすませ。その後彼女とはよい友人関係を築いていると思っている。その頃からいつも学園内でも常に隣に居たチェシャ猫は、よくわたしの元を離れてはうろうろしているらしい。らしい、というのは学園内でよく猩々緋色をした猫を見たという目撃情報が舞い込んでくるわけで。

 そうしてチェシャ猫は言うのだ。

「――良かったね、御灯。もう、寂しくて泣くことも、きっとないね」

 何時もの彼の笑みは、けれど何処か一段と嬉しそうにも見えた。




Fin.

2013/09/10 04:43 - No.1

祷月 常盤 @tokiwa


というわけでありまして、【わたしのせかいは、】でした。
御灯の八十神へ来る以前から高等部の現在までを書いております。三千字を余裕でオーバーしてしまいましたので、こうして分けて投稿することになりました!
そして、はるちゃん宅の黎二くんのお名前と、ひーちゃん宅の麗華ちゃんのお名前をお借りいたしました!
ふええっ、有難う御座いますっっ! 何かありましたらご遠慮なくお知らせくださいいいっっorz

御灯は古褪という旧家の一人娘でありまして、しかし彼女を取り巻く環境は決して良いものではなかった。のち、能力を開花させた際に彼女自身の手で、彼女自身の意志で家も何もかもをマッドハッターにより消滅させる。それから八十神へと送り込まれ、という感じです。
彼女が人を拒絶した後の無関心であるのは、幼少より蓄積されたものが一気に爆発した産物であると私は思っております。けれど、彼女の隣にはいつだって御伽の住人がいて、チェシャ猫がいて。だからきっと、人間と接しなくても彼女はそれはそれで表面的には寂しくなかった。けれど、彼女も気づいていない奥底では、やはりさびしいということにチェシャ猫はずっと気づいていたんだろうって。それで高等部に改めて黎二くんと対面して、時間はかかっただろうけれど、最終的には御灯は黎二くんを信じるようになる。そして麗華ちゃんと知り合って、それからは麗華ちゃんと御灯が仲良かったらただの私得ですもきゅもきゅ。からの、最後のチェシャ猫の言葉なんだろうって。

初等部から高等部現在までつめつめしすぎた感じなのでかなり読みにくいとは思っておりますが、いやはや御灯視点のものを一回書きたいと思ってたので、かけてよかった!
満足です! よし、暫くは籠ろう((

それでは、お粗末さまでした。ありがとうございます!

2013/09/10 05:00 - No.2

遥 @line



御灯ちゃん可愛い……、だっことか、だっことか!私がしたげr((
こちらこそ、黎二を信じてくれてありがとう!
もう御灯ちゃんみたいな子が妹的存在とか役得過ぎて悶えてます。
むしろ本体のお嫁においでーおいd((


黎二も御灯ちゃんのような妹的存在がいてすごく救われたこともあったと思うし、少しずつ安界のみんなと仲良くなっていく御灯ちゃんを見て、人は変われるということを教えてくれた一人だと感謝していると思います。
そして、チェシャ猫さんの最後の台詞が心に染みた……。すごい温かい話で。チェシャ猫さん好きやわ……。


そして、私のssと絡めてくれて、すごく嬉しいっ!
私ももぐもぐしてます、もぐもぐ。
ありがとうっ、ありがとう!!

2013/09/10 21:37 - No.3

祷月 常盤 @tokiwa

ふみあっ、コメントありがとう……!! お返事遅れまして申し訳ない(´・ω・`)

御灯は御伽の住人主にチェシャ猫には初等部の頃とかは「だっこ」とか「おんぶ」とかめっさ子供が親に甘えるようなことをお願いしていたに違いない……、いや寧ろ御灯がそういう意思表示をしなくてもチェシャ猫が率先してやってたに違いないカッとなって書きました反省はしていない((ドヤァ/ΣΣ
えっ、はるちゃん御灯だっこしてくれるのええで!!!! 遠慮せんでええんやd((((
とと、えへへ、此方こそ御灯を気にかけてくれて、本当にありがとう(*´ω`*)きっと、本当に御灯は救われたんだなあって思っております。
嫁……だ、と(カッ← ええんですか……、寧ろ御灯でええんですk(あかん

そういって頂けると、本当に私も御灯も、そしてチェシャを始めとした御伽の住人たちが救われます(*´ω`*)ありがとう
チェシャ猫は私も好きなキャラで、彼は住人の誰よりも御灯の傍に居て、保護者みたいなことをずっとしていたんだって思っています。それこそ、御灯が能力を発動したときからずっと。だから、チェシャ猫の最後の言葉も本当に素直なそれなんだなって。はるちゃんにチェシャ猫好きって言われてめっちゃ嬉しいですっ! 感無量すぎる(*´∀`*)ありがとう!

とと、いあいあ!! 書いてる私はすごく楽しかった! 此方こそ有難う!*
では一緒にもぐもきゅだね!!!!((ちょっと意味わかんない←

読んで頂けてうれしいです!
ありがとうございました!!

2013/09/13 23:54 - No.4

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